先日とあるお客様が
「この間よその店に行ったとき『わざわざイタリアまで行ってるって
アピールする店もあるけど、行ったからといってどうということもない
ですよー』、って店の人が言ってたけど、あれって日子のことだろうね。」
と苦笑いしながらお話して下さいました。
「行ったからといってどうということもない」なんて、
随分もったいない考え方だなあ…。
それが率直な感想でございます。確かにこの不景気に経費をかけて、
時間をかけて、手間をかけて、わざわざヨーロッパまで足を
運ばなくても、「インポートブティック」を経営することは、実は可能です。
ヨーロッパのブランドと契約し、商品を仕入れ、それを小売店に
卸す「メーカー」「代理店」と呼ばれる形態の会社が日本には
たくさんあり、その会社が国内(主に大阪や東京)で開催する展示会に
足を運び、商品を注文すれば、シーズンになったらその会社経由で
ヨーロッパから荷物が届くのです。
しかし、国内のメーカー展示会で目にすることができるのは、
あくまでブランドが作っている全サンプルの中からメーカーの
担当者が選別・調達した「限られたアイテム」たちだけ、という
ケースが少なくありません。
(メーカーがブランドにお金を払ってサンプルを調達するケースが
多いので、全サンプルの買取など到底できないのが現状
なのだとか。)
つまり、国内の展示会では、メーカーの担当者が一度選別
(当然、担当者の好みや価値観、センスによって、調達される
アイテムも変わってきます)した、限られた商品の中から、
さらに自分のショップに合う品を選ばないといけなくなります。
お客様は、さらにその中から、お客様のお好みに合う品を
見つけなくてはなりません。
そのためメーカーを通して仕入れる商品は、「よそのお店にも
同じものが!」ということがありえるわけで…。
もちろん日子も、正直な話、一部の品はメーカーを通して
仕入れているので、「同じものが他店さんにもある」ことが
まれにあります。
大手のメーカーが仕入れる、扱うブランドは、メーカーの
広報チームの力でメディアにアピールされていくので、
小売店にとっては「売りやすさ」はある反面、お客様から
見れば「どこのセレクトショップを覗いても、同じブランド、
同じアイテムばかりだなあ」という現象に繋がりがちです。
イタリアやフランスに直接足を運ぶことで、そういった
「メーカーのフィルター」を通すことなく、「メディア」
だけを過信することなく、「本当に良いもの」を自分の目で
確かめ、探し、仕入れる事が出来るのです。
物作りの現場に直接足を運ぶことで、デザイナーや
職人たちの声を聞き、また、お客様の声を彼らに
届ける事が出来るのです。
季節季節にヨーロッパの街を歩くことで、通りを行く人の
「今」のファッションを肌で感じる事が出来るのです。
その国ならではの文化に、五感で接する事ができるのです。
『行ったからといってどうということもない』
ああ、なんともったいない考え方でしょうか。
ヨーロッパは宝の山なのです。
ブティックは「商品を仕入れて売る」だけが仕事では
ありません。名の売れたブランドの商品を並べた店が
「セレクトショップ」ではありません。
自分たちの目で、足で、心で、「お客様の毎日を楽しく
彩るため」の「何か」を探し続ける事、それがファッションに
携わる人間ならばやり続けていかねばならぬこと
ではないかと、私は思います。
そのための労力や投資は、惜しんではいけない。
そんな思いで、これからも仕事に臨んでまいります。
By KION
コメントを投稿するにはログインしてください。